はじめに
一昨年に与論島に行って体験ダイビングをし、美しい青い海に触れてダイビングを再開した。去年は慶良間諸島の阿嘉島に行き、日本の南の海はこんなに良いものかと思った。今年は美しい海とマンタに会えるかもしれないという期待から石垣島に行くことにした。また、今回はクラブのメンバーと一緒に行けばより楽しいダイビングになるのではないかとの思いから、クラブ主宰の石垣島ダイビングツアーに参加することにした。
7月11日(金)
(1)石垣島へ
朝3時に起きて集合場所のJAHダイビングクラブに行く。6時35分羽田発那覇行きANA993便乗るためである。石垣島行きのメンバーはWさん、Sさん、Oさん、Mさん、Yさん、私、そしてクラブのスタッフの冨山さんの7人である。Wさんはレスキューコースの訓練を受けた時のバディだった。Sさんは青年でクラブで時々出会い、話をしている。Oさんは初めて会ったが私の年齢に近く一緒に潜るのが楽しみである。Mさん、Yさんも始めてだったが、なかなか魅力的な若い女性である。冨山さんはPADIのコースディレクターで私の先生であり、いつもは冗談を言ったり女性をからかったりしているが、ダイビングでは頼りになる人なのである。皆時刻通りに集まりクラブのバンに乗り込み、4時に富山さんの運転でクラブを出発する。1時間ちょっとで羽田に着いてしまった。冨山さんは私達を降ろし、車を預けに行った。朝早く発たなければならないときはこの手を使おうと思った。
チェックインを待つ間に持参したおにぎりを食べた。こんな朝早く空港のお店が開いているかわからなかったからである。お店は6時になると一斉に開くことがわかった。ボードを見ると沖縄行きは6時25分と発6時35分がありどちらも満席だった。手荷物検査を受けてから搭乗口に行く。チェックインに手間取ったためほんの少し待っての機内入りだった。そのため座席は後ろから2番目だった。好きなウインドーサイドではなかったので、本を読んだり、朝が早かったのでうとうとしたりして過ごした。那覇空港には予定どおりの9時5分に着く。石垣島行きの搭乗口に移動した。飛行機はボーイングB737-400で小さい。127座席で、羽田からの297座席のB767-300の半分くらいの大きさである。今度はウインドーサイドであった。変化する雲は南に来たとの思いからか、青い空の中で一層白く見える。そして空と海の交わるところは白くぼーっ
としていて、窓から下の方に、上の方に目を移していくに従いくっきりと鮮やかな青色になる。只今宮古島の上空を飛んでいますというアナウンスがあったが、右側の窓からは見えなかった。機は宮古島の西側を通ったのだ。いずれにしても11時前、1時間足らずで石垣空港に着いた。
(2)初ダイビング
空港にはダイブカレッジアクアズー(AQUA ZOO)、良い名前である、のスタッフが迎えに来ていた。外は30℃を越えて暑いがいやな暑さではない。私はHさんという小柄なそしててきぱきした女性スタッフの車に乗る。アクアズーに行く間に石垣島の人口は約4万7千人もいることを聞く。確かに車から見る街の風景は都会のそれである。ビルがたくさんあり、通りはにぎやかでお土産屋さん、飲食店が多いのが目に付く。この地方にある赤い瓦屋根の家は見た限りでは極めて少ない。四角っぽいコンクリートの家がほとんどである。アメリカ統治の影響だろうか。
アクアズーは空港から近かった。また港も近くに見える。着いてからショップの施設の紹介、スタッフの紹介があった。優しそうな島田さんは40台、25歳で若く見るからにエネルギッシュな通称まろさん、おとなしそうな20台の枡田さん、Hさんは看護婦さんを辞めてダイビングインストラクターになった人であり、もう一人インストラクターになる修行をしているハイティーンの可愛い女性のMさんの5人が我々を案内しサポートしてくれる。島田さんは東京出身、まろさんは東北、枡田さんは神戸、Hさんは千葉県でMさんは埼玉県出身である。与論島、慶良間諸島のダイビングショップのスタッフもほとんどが内地出身であった。南国の島は何かがあるのだろう。
昼食はアクアズーで用意してくれたお弁当を食べる。普通のお弁当だったが朝が5時半頃だったのでお腹が空いていて美味しかった。昼食後ダイビング機材をメッシュバッグに詰め替え、ウエットスーツを腰まで着て車に乗り込み港に向かう。1時半頃港を出て最初のポイントの牧場下に向かう。ボートは左手に西表島を見ながら進む。海は場所によってコバルトブルーから深い青色、あるいはその中間の色といろいろに変わり、空は青く雲は白い。陸に目を移すと低い稜線がうねうねと続き於茂登岳という山なのだろうか、せり上がるように高くなる。山は緑でところどころ雲の陰が映って濃い色になっている。本当に良い。ゆったり。うるさいエンジン音が小さくなりやがて停まると一気に心がはやる。枡田さんのブリーフィングがもどかしい。ウエイトベルト、BCD、レギュレータ、マスク、フィンをつける。アドレナリンが出ているとは言えやはり老体には機材は重い。
バックロール・エントリーで海に飛び込む。泡のなかでレギュレータから空気を一吸い、体勢を整えてから船首に泳いで行く。アンカーロープ伝いに潜行し、海底でブルーの海を見ながら後続を待つ。ところでOさんは2、3日前から風を引き体調が悪くホテルで休むことになった。残念、気の毒だが仕方無い。舛田さんはアンカーの近くの水中に浮かんで動かない。冨山さんはなかなか降り
てこない。しばらくして冨山さんが合流し、枡田さんの案内で石垣島初ダイブに出かけた。後で知ったがMさんは耳抜きがうまく行かずにダイビングを断念した。まずは大きなアカククリに出会う。ゆっくりとペアで泳いで行く。砂地に出るとオグロトラギスが目に入り、その向こうに5、6匹のチンアナゴが砂の上に顔をだしていた。良く見ると黒い斑点があるのがわかったが、気持ちよい姿ではない。岩場に行くといたいた鮮やかな橙色に白い三本線のカクレクマノミ、いつみても可愛い。また南国の海にはスズメダイの仲間がたくさんいる。頭の辺が青く胴体が黄色いエレガント
なレモンスズメダイ、尻尾だけが白くあとは黒色のアマミスズメダイなどが泳ぎ回っていた。残圧が少なくなり30kg/cm2になったことを舛田さんに知らせる。少し焦ったが程なくアンカーにたどり着き、ロープを伝って浮上する。ボートに上がる階段に膝をつくとスタッフのだれかがフィンをはずしてくれた。助かる。
少し休んでから二番目のポイント、大崎ハナゴイリーフに移動する。ポイントに着いてからエアタンクを交換し、機材を身につけて同じように潜行する。今度もWさん、Sさん、Yさん、私の4人とスタッフである。歌舞伎役者のようなハナミノカサゴが海底に一匹でいた。寂しそう。サンゴにいる小さな魚と遊ぶ。脅すとサンゴの中に隠れ、少しするとまた出てきて泳ぎ回る。頭上を見上げると縞模様のロクセンスズメダイが群れ、尾根のような地形一面に生えたサンゴの上を背びれと尾びれの黄色が目立つアサドスズメダイが群れ泳いでいた。素晴らしい。島田さんが私のカメラで写真を撮ってくれた。5時少し前にエクジットする。3ヶ月ぶりのダイビングを堪能した。
港に帰り、アクアズーで機材を水洗いし、ウエットスーツは干し、その他の機材はメッシュバッグに詰めてアクアズーに預けた。シャワーを浴びてから海パンにTシャツ姿でホテルに帰る。6時を過ぎていた。ホテルはWさんと相部屋である。シャワーを再び浴びて着替え、海で撮った写真をチェックしたりダイブログをつけたりして過ごす。夕食を食べに行くためロビーに下りてゆく。約束の7時半に皆が集まりタクシーで“源”に行く。外はまだ明るく、西に来たことを実感する。夕食については後述することにするが、泡盛と郷土料理を堪能した。10時過ぎにホテルに帰る。
7月12日(土)
朝7時半に食堂に下りて行く。近頃はビュッフェスタイルの朝食が多いが、ここは料理が運ばれてくる。洋食でパン、バター、そして卵焼き、煮たかぼちゃ、ポークランチョンミート、しし唐などが少しずつきれいに白いお皿の上に盛り付けられている。女性のコックさんだろう。旅行をすると食欲が出る。パンをもう一個食べたかったが、腹八分目とした。
9時にアクアズーが迎えに来る。バンに乗り込み川平湾に向かう。エアコンが壊れていて自然
冷房であるが、湿度が高くないので逆に快適である。景色はサトウキビ畑が多い。背の大きいもの、中くらい、小さなものが植わった畑があり、三期作なのだろうか。稲はなかった。マンゴーやパンナップルを売る看板が所々にあった。背の低い見るからに南洋の木の畑があったが、パインだったのかも知れない。マンゴーはどんな木かわからなかったが、これから行くブレニーというダイビングサービスの前の家にマンゴーがなった木あった。バナナやパインのような特徴のある木ではない。しかし、なっていたらわかるので道路沿いには無かったと思う。海岸沿いを通ったとき10本程度のマングローブが生えていた。まだ小さかったがたこの足のような根をしっかり土に張っていた。帰りに見たときは満潮で海面の上にわずかに出た梢が風にゆれていた。
約30分でブレニーというダイビングサービスに着く。ダイビング機材はここに運ばれてきてい
た。ウエットスーツを腰まで着て浜に出かける。白い砂にコバルトブルーの海、まぶしい。日差しは強く肌がじりじり焼けるようであった。昨日乗ったボートが回航され係留されていた。じゃぶじゃぶと水の中を歩いてボートに乗り込む。石崎マンタスクランブルというポイントに行く。浜から15分位で着いた。ボートが既に7隻いた。今日のガイドは島田さん、マンタウォッチングのブリーフィングを受ける。マンタはここにクリーニングに来るのだ。ここには大きな根があって住んでいる掃除屋のホンソメワケベラがマンタに着いた寄生虫を食べてくれるのである。移動するときは邪魔しないように中層を泳がずに根の近くに沿って泳ぐ、ホンソメワケベラがいる根の頂上では待機しない、頂上の少し下の斜面で待つ、頭上をマンタが通過するときは息を止めて泡を出さないの三つの注意がなされた。Oさんは少し良くなったようでボートには乗り込んだが、ダイビングをするにはいたらなかった。しかし私のウエットスーツを整えてくれた。
10時半バックロールでエントリーして潜行し、後続を待つ。今回はWさんはうまく耳抜きができたようで合流して待機ポイントに移動する。岩をつかめのサインが出て適当な場所を見つけて待機姿勢をとる。水深は約12m。ぐるっと周りを眺めると青い青い海の中に何本もの泡の柱が見える。透明度はそんなに良くないように思った。与論島、慶良間諸島の海はもっとクリアだった。残圧50 kg/cm2を島田さんに知らせる。島田さんからの指示だろうHさんが私に近づいてきてオクトパスを渡してくれた。私は自分のレギュレータを口からはずし、Hさんのオクトパスくわえ、クリアしてからエアを吸い始めた。普段から私は少しエアの消費量が多い。今回は知らず知らずに緊張してさらに消費量が増えたのだろうか。いずれにしてもありがたいサポートである。このサポートにもかかわらずマンタは出現しなかった。
浮上するとさっきは7隻だったボートは20隻にもなっていた。オンシーズンなのだ。一旦浜に
帰り、昼食をとる。昨日と同じお弁当だが、まぶしい程の明るさの中、ボートの上で仲間と一緒に食べるのはうれしく、一層美味しい。使ったエアタンクをスタッフがボートから降ろし新しいエアタンクを積み込む。少し休んでから2回目のマンタウォッチングに出かける。1時半にエントリー。潜行して待機ポイントに泳いで行く間にこの根は相当大きな岩でできていて複雑な地形をしていること
がわかった。そして珊瑚も魚もたくさん付いている。マンタを待っている間に今回は近くにいるクマノミ、メガネゴンベなどを眺めたり、写真を撮ったりした。今回もマンタには遭遇せず。
3本目はポイントを変えて吉原アーチに行く。海の細い回廊である。回廊の上は狭い隙間が海面まで続いている。従って洞窟とは違い太陽の光が届き安心である。全体として道は上ってい
てその中でアップダウンがある。緊張しながら進む。1、2度エアタンクを岩にぶつけてヒヤッとした。時々止まって魚を見る。紫色のきれいなクレナイニセスズメ、だと思う、マツカサの類を見た。また途中で逆方向から来た女性軍とすれ違う。回廊を抜けたとき浅い所に来たことに気づくのが遅れて危うく浮き上がるところだった。スリルがあってなかなか面白かった。4時35分エクジット。ダイビングサービスブレニーに戻りシャワーを浴びてからホテルに戻る。
昨日と同じようにホテルに帰ってからはシャワーを再び浴びて着替え、海で撮った写真をチェックしたりダイブログをつけたりして過ごす。7時15分に皆で夕食に出かける。今日は歩きであり、冨山さんについて行く。7、8分歩いた“うさぎや”という居酒屋に入る。ここでも泡盛と郷土料理を堪能した。ホテルに帰る途中なぜかコンビニに寄った。私はなぜか普通の食べ物がたべたくなりおにぎりとさんぴん茶を買った。さんぴん茶は要するにジャスミン茶だろう。今日も10時過ぎにホテルに帰る。
7月13日(日)
朝7時に朝食を食べる。今日は和食である。目玉焼き、魚のから揚げ、冷やっこ、ひじき、梅干、美味しく平らげる。昨日と同じ9時に迎えに来たアクアズーのバンに乗り、川平湾にマンタウォッチングに行く。別のポイントに行く案もあったが、マンタが来たのに別のところに行って見られなかったら悔いが残るという心理が働いたのだろう。それももっともなことである。ポイントは昨日と同じで1本目は遭遇できなかった。帰ってきて昼食を食べて休んでいる間にマンタが現れたという情報が入り、勇んで行ったが2本目も姿を見ることはなかった。
マンタを待っている間に目の前を小さなアサトスズメダイがあっちへ行ったりこっちへ行ったり
忙しく動き回っていた。動きが早くなかなか写真が撮れなかったが、時間がたつにつれてゆっくりした動きとなりカメラのフレームに入るようになった。周りを見渡すとイロブダイ、アマミスズメダイなどが泳ぎ回り、あるいは珊瑚を突いている。警戒心を解いて自由にふるまっている。グルクンの群れが帯状になって目の前を通り過ぎてゆく。魚、珊瑚、青い海、それらの世界に自分が身を置いている、何も考えない、そしてゆっくりと時間が過ぎて行く。
1本目、潜行して待機姿勢をとるときちょうどつかみ易い小さな手ごろな岩があり、つかんだ瞬間激痛が右手親指に走った。手袋をとって見たら3本のウニの棘が親指に刺さっている。棘は中に入ってしまって取ることができなかった。岩の下を除くとウニがいた。痛い! 浮上して手当てをしてもらおうか、我慢しようか迷っていたが幸い5分くらいしてから痛みが引き始めた。良かった。
2本目はエントリーしたとたんに片方のフィンがはずれ、ゆっくりと沈んでゆく。さらに飛び込んだときオクトパスとレギュレータのホースがからまったのか何か首がゆうことを聞かず苦しい感じがする。冨山さんが来てホースを直してくれる。フィンは若い女性のスタッフMさんが取ってきてくれて足につけてくれた。慶良間でもフィンを落とす同じミスをした。対策をしないといけない。ホースについてはやはりプレダイブチェックが必要。
この日はOさんがダイビングに始めて加わる。ようやく6人そろった。そして2本目はWさんの記念の100ダイブ目である。Congratulation 100Diveと書いた50×30cm位の布製の旗をWさんが上、Sさんが右下、私が左下を持ち、Oさん、Mさん、YさんがWさんを囲んで記念撮影。皆がそろってめでたしめでたし。この後冨山さんがWさんを抱えて揺すっている。胴上げと気が付いたが遅かった。今度誰かの記念ダイブに立ち会ったら胴上げ加わろう。2時40分にエクジットする。この日はダイビング後ブレニーで少し休んでから、アクアズーに移動して機材を水洗いしメッシュバッグに詰めてホテルに帰る。
ホテルでは部屋のベランダに機材を干し、シャワーを浴び、一休みしてからお土産を買いに出かける。行き先はホテルから歩いて1分の市場である。冨山さんが美味しいといっていたピーチパインを2個、石垣名物の塩のお菓子、黒糖饅頭、紅いもタルトを買う。ピーチパインは一個は娘のところで、もう一つは息子が来たので一緒に食べた。甘く、最初はパイナップルの味がして当然だが、後でココナッツの味がしてきて大変美味しかった。
6時半にアクアズーの舛田さんが迎えに来てくれ、車で「ゆんた」に行く。アクアズーのスタッフとツアー打ち上げパーティーである。にぎやかなパーティーだった。帰ったのは11時近かったのではないか。